Written by [とりこ]
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[135] 白痴<3> ドストエフスキー,米川 正夫岩波書店完読 2007/09/28 22:32マイページに「白痴<3>」を購読候補リストとして登録します。
●出来事●
・ナスターシャ、エヴゲーニイを侮辱。エヴの腹心である仕官と大喧嘩。
・公爵、喧嘩を止めに入ったために仕官に決闘挑まれそうかも
・エヴゲーニイの伯父、カピトン・アレクセイチ(カピトン・ラドムースキイ)が官金を使い込んでピストル自殺したことが露呈する。
・エヴゲーニイがアグラーヤに“直談判”(=求婚)。アグラーヤに断られる。
・ナスターシヤはアグラーヤと公爵を結婚させたいらしい。
・大空に太陽は響きそめたり<黙示録>太陽(生命の根源)→茵蔯の星
・レーベジェフの詭弁。茵蔯の星から人食い(飢饉の時代。坊主の赤子食い)から罪人の犯罪心理学。話題の飛躍がおかしいうえに本質から反れているよ・・・。
・イッポリートの『わが必要なる告白』がはじまる
・公爵、アグラーヤと密会
・レーベジェフ、金を盗まれる(犯人は将軍?)
・公爵、ナスターシャに別れを告げられる。



2巻を読了してだいぶ間があいてしまったので人物名などのド忘れが激しくて困りました・・・orz
やっぱりロシア文学は一気に読んでしまわないとだめですね。
途中で中断しちゃうとだめになる。で、この巻ではいよいよ
公爵×アグラーヤ×ナスターシャの三つ巴(?)というかどろどろの三角関係がはっきりしてきます。一巻で「この子はすごい!」と思ってたラゴージンの弟、コーリャ君(中学生)、やっぱりバカだった(汗)私の買い被りだったのか・・・
名前 レス
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[134] 間違いだらけのアトピー治療 (新潮新書) 竹原 和彦新潮社¥714完読 2007/09/28 22:25マイページに「間違いだらけのアトピー治療 (新潮新書) 」を購読候補リストとして登録します。
〜〜アトピーは一生治らない難病〜〜という誤った認識を、メディアや経験不足の医師たちによって思い込まされているアトピー患者向けに書かれたハウトゥ根治本。
正しい治療=“ステロイド外用剤による適切な薬物治療によって”アトピーは完璧に治る!ということを筆者──日本皮膚科学会、厚生労働省強皮症研究班、アトピー性皮膚炎問題の担当理事である(ようするにアトピー性皮膚炎治療の第一人者)、竹原和彦医師が、ていねいに解説してくださっています。
脱ステロイド療法、厳格食事制限療法など、間違った治療法を喧伝するメディアへのバッシングや、「アトピービジネス」(=科学的根拠に欠けた金儲け主義のインチキ療法で患者より金銭をだまし取る詐欺的行為)の糾弾。
また、竹原医師自身の経験或いは研究により結論づけた独自の治療法があったりと、医療従事者の裏世界を垣間見ることが出来るので、患者だけでなく医師薬剤師が読んでも、すごく面白い本です。
個人的にもっともオドロキだったことは……今まで私は大学で、“アトピー性皮膚炎といえば、IgE抗体産生(アレルギー反応)が炎症を誘因する”と教わってきたのですが、竹原医師によると「アトピー性皮膚炎の主体は、アレルギーではない刺激反応で、アレルギー反応は悪化の過程の一部に関与しているに過ぎない」…つまりIgE抗体産生がなにもアトピーに特異的な現象なわけじゃなく、むしろ健康人にだって起るあたりまえの反応であり…ま、ぶっちゃけるとIgEが原因となってるっていう説は信憑性ナッシング☆ということでした。

以下は自分の勉強のための備忘録です。

第一章
★アトピー性皮膚炎は小児期・思春期にピークがあるが老人性は殆ど存在しない、つまりアトピーは必ず治る病気★アトピーは軽微、軽症、中等症、重症にわけられる。中でも重症の特徴として浸潤(ごりごり)、苔癬化(しわに沿って皮膚が肥厚)、びらん(ジクジク)、痒疹結節(ひっかいてしこりになったもの)がある。診断には「触診」が必須!!★アトピー性皮膚炎の治療のゴールは、周囲の人と同じような生活を送れる為の治療の手段を習得すること。★ステロイド外用薬は五段階・・・ストロンゲスト、ベリーストロング(このふたつは処方が必要)ストロング、ミディアム、ウィーク(市販化されている)★
第二章
☆診断基準「アトピー性皮膚炎は、増悪・寛解を繰返す、癢痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」☆食物アレルギーが原因であることは学術的に証明されていないので「厳格食事制限療法」は妥当な治療法でない、そればかりか、栄養・発達障害を起こす可能性があるうえに子供の偏食や小学校でのいじめの原因になったりするのでNG☆アトピーの本態はバリアー機能の異常と非特異的刺激による皮膚の炎症であり、薬物療法が十分に行えればほとんどの例では治療の目的を達成しうる。アレルゲン除去で完治は期待出来ない、それはあくまで補助的治療である☆
第三章
★ステロイド長期使用による効果減弱は、ヒト細胞の性質上ありえない。効かないとされる場合も大部分は、薬の選択・使用法の間違いであり、本当に効かない例は存在しない★ステロイド外用薬は、かゆみの強さを中心に“使用する/中止する”を判断するのではなく、あくまで皮膚の炎症が十分に鎮静化するまで使用する。十分な湿疹の改善をみないうちに勝手に休薬するのは絶対NG、医師から指示されても、それは医師の知識不足(副作用を見分けることが出来ない)によるものだからダメ★ステロイド外用薬を科学的根拠なしに希釈したり他の外用剤と混和することは勧められない。★
第四章
☆抗アレルギー薬の主たる作用は「かゆみ止め」であり、体質改善(遺伝情報をかえる)ではない。眠気(副作用)をあえて我慢する必要はない。眠気のでない薬→アレグラ、クラリチン、アレジオン、エバステル、ジルテックなど。逆に眠気の少し出る薬を服用することでわざと「夜間のかゆみ」を抑えることもできる☆プロトピック軟膏の主成分はタクロリムスという免疫抑制剤でステロイド外用薬と組み合わせて使用。ステロイドで皮膚萎縮のおこりやすい顔面、頚部の皮膚症状治療に優れる。ただし、プロトピック軟膏は原則として妊婦に禁忌(1日10グラム以内ならまず問題はないが…)マスコミがプロトピックの発がん性を過大評価したため禁忌になっただけ☆成城の皮膚には保湿は不要で、軽症の皮膚に保湿薬入りの外用薬を使用するのが効率的な治療法。☆アトピー重症化の原因の一位は「漢方薬のみに頼った」治療、漢方薬は即効性が無ければ長期に試みる価値はない。
第五章
★肉類や甘いものを制限しても大勢に影響はない★アトピー患者はふつうの石鹸で身体を洗いしっかりすすぐことが大切★アトピー性皮膚炎の子供に日焼け止めクリームを使う必要はない。(純粋な紫外線は炎症を抑える効果がある)
第六章
☆特殊療法でも本当に有効ならすぐに標準治療になるはずで、そうならないものは期待できない☆医学的に「好転反応」なるものは存在しない。好転反応は悪化に対するインチキ療法の言い逃れ☆アトピーに対する海洋深層水の効果はまったく実証されていない☆イソジン療法も超酸性水療法も、アトピー性皮膚炎を改善させる科学的根拠は無く、勧められない。☆アルカリイオン水を飲用しても胃酸で中和され、体質が変わったりアトピー性皮膚炎が改善されることはない☆自宅での温泉湯治療法は、社会生活からドロップアウトさせられることもなるのでお勧めできない☆免疫力を高めてアトピー性皮膚炎を改善させると言う理論は矛盾している☆中国製の未承認薬を個人輸入で購入・使用するのは極めて危険。
名前 レス
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[59] 白痴<2> ドストエフスキー,米川 正夫岩波書店07'7'15完読 2007/07/16 01:34マイページに「白痴<2>」を購読候補リストとして登録します。
二巻目読了。意外と早いなーやっぱりドストエフスキーはセリフ長いから一息に読めてしまうや…。ノリで。

以下メモ

●一巻で喝破したムイシュキン公爵の死刑諭、今度はレーベジェフがそれについて(別の話題ではあったが…)滔滔と語っていた。

●ラゴージンと公爵がいつのまにか仲良しに…(ちょっと飛躍しすぎだよ)
公爵⇔ラゴージン 十字架とりかえっこ!

●公爵、ナスターシャ・フィリッポヴナの事について→「ぼくはあの人を、『恋で愛してるのじゃなくて、憐憫で愛して』るんだよ。…」
いつかの村のかわいそうなマリイに対する感情と同じ
公爵はなんでも可哀想がる(キリストの愛に模してるのか)

●公爵が癲癇の発作おこした…あれよあれよというまにパーヴロフスクの別荘(レーベジェフが管理)に移動。そこで久しぶりにエパンチン家の人々と再会する。

●パヴリーシチェフの息子ことアンチープ・ブルドースキイ率いる ゆすり集団(違…) がドヤドヤ乱入 なんかガヤガヤいちゃもんつけて金たかろうとする(…なんなの)

●ちょっと打算的だけど一巻に比べてとても良い人間に生まれかわったガーニャが、イッポリート(肺病病み・コーリャの友達)、ケルレル(拳固先生)、ドクトレンコ(レーベジェフの甥、バクチ打ち)タチの理論の矛盾をついて鮮やかに言い負かす!かっこいいv

●イッポリートがリザヴェータ夫人を泣き落としにかかる…このへんのイッポリートの哀れさがたまらない 少し好きになってしまった。

●公爵もしかしてアグラーヤに恋をしているのかも 待て次巻!



ただの白痴かと思ってた公爵のスルドい洞察力にドキッとした一冊

狂気まで帯びて来ました…次はとうとうナスターシャに接近でしょうか。アグラーヤとの恋愛遊戯(?)も気になるところ。
名前 レス
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[58] モナ・リザは高脂血症だった―肖像画29枚のカルテ 篠田達明 新潮社 ¥71407'7'12完読 2007/07/12 21:52マイページに「モナ・リザは高脂血症だった―肖像画29枚のカルテ」を購読候補リストとして登録します。
大学で教授が教えて下さった本です。
まず、タイトルから目を引きますね。モナリザが高脂血症〜?!美女を捕まえて高脂血症は無いよ!しかしタイトルに負けず内容もとってもおもしろくて二日で一気に読んでしまった。これは、医者や薬剤師、看護師など医療従事者を志す学生に読んでもらいたい本かも。

この本は、「肖像画を医学的見地から推理する」というテーマで、整形外科医師にして時代小説家・篠田達明先生が書かれたエッセイ。名医は患者の様子を見るだけで、病気の内容があらかた分かる(西洋医学では視診、漢方では望診という)そうですが、篠田先生は世界中の数多くの名画や像から、歴史上の人物の罹患していたであろう病気を推理した・
目のつけどころが違うというか発想がおもしろいなー。しかも篠田先生の博識っぷりに感動。医者でありながら歴史おたく(笑)とても他人とは思えないなー・・(私も大学では医療勉強してるけど本当は歴史大好きの超文系人間だから。)
以下、本書の内容からいくつかの症例を抜粋する。

●モナ・リザ 《高脂血症》 根拠: 眼瞼黄色腫(瞼にコレステロールが沈着)、コレステロール食(イタリア料理)の食べ過ぎか。口内炎らしき発疹はぶどう酒の飲み過ぎからなる消化不良のためか

●宮本武蔵 《巨人症》 根拠: 眼球突出、脊柱の後方彎曲、猫背の巨体 晩年は下垂体機能不全による心身の急速な衰え、健忘、体力が無くなる等 脳下垂体前葉から分泌される成長ホルモン過剰

●ヴィーナス(ボッティチェリの絵) 《外反母趾/水虫(汗疱状白癬)併発のおそれ》 根拠:右足の母子と第二足指の重なり、母子のつけ根の出っ張り(バニオンという腫れ物で、中には「粘液嚢」というねっとりした液体の入った袋までできる)

●菩薩像(数点) 《(脊柱)側彎症》 根拠: 背面水平差(肋骨のねじれによる左右の肩甲骨の高さの差)、あるいはハンプ(肋骨隆起)

●豊臣秀吉 《多指症》 根拠: 片方の手の指が六本 血の濃い結婚を繰り返すと多指症になり易い。「(秀吉の)片手には六本の指(seis dedos)があった」 BYフロイス   「太閤さまは、右の手おや指一つ多く六つ御座候」 BY『国祖遺言』…前田利家が晩年語った回顧談 など 数点の文献。晩年は精神不安定(息子の鶴松が三才で夭折)、くわえて老人期痴呆(寝小便など)

●井原西鶴 《高血圧/脳卒中の既往/左半身麻痺(ウェルニッケ-マンの拘縮)》 根拠: 肥満体、右手でやや肉のおちた左手を抑える肢位、癇癪持ちらしい顔つき、表情に左右差、「いまほど目を病み、筆も覚え申さず候」←眼性疲労による眼痛や高血圧による眼症状

●織田信長 《本態性高血圧》 根拠:比叡山焼きうち、長島一向一揆二万人の焼殺・・・すぐかっとなる性癖(幼児期に親にうとまれた子供は長じて粗暴かつ奇矯な行動を示すことがおおい)、短時間睡眠、塩気の多い食事、戦争というストレス

●藤原道長 《糖尿病》 根拠:口渇、多飲、体重減少、仕事のストレス、叔父・兄・甥も糖尿病症状を呈しているため家族性(遺伝性)糖尿病と思われる。狭心症様不安発作と不整脈、糖尿病による免疫力低下で敗血症、最終的には多臓器不全で死亡

●徳川家重 《脳性麻痺によるアテトーゼ(付随意運動)》 根拠:歩行障害、たえず首を左右にふるなど不随意運動(アテトーゼ)、言語障害、遺体には歯列の咬面にいちじるしい磨耗(アテトーゼによる歯ぎしり)

●ドラキュラ伯爵 《ポルフィリン症》 根拠:なんらかの原因によって血中のポルフィリン(赤血球に含まれるヘモグロビンに関与する色素)が異常に蓄積した状態。歯牙・皮膚・骨格に色素沈着、光過敏(日光にあたると光線過敏性皮膚炎)、光線にあたると赤血球が溶血することによる貧血(青白い顔)、発作的に頭痛、、全身倦怠感、不眠、不安、ヒステリー状態、ニラ・ニンニク臭では胃腸が刺激され消化器症状(悪心、腹痛、下痢)が悪化




こういったナイス・アイデアなカルテ集だけでなく

内視鏡、CTやMRIなどの検査機器を、時代を先取りして描いた浮世絵師や作家がいたことまで紹介されてます。学校の勉強の復習にもなりました・医学生諸君はぜひ読まれたしですよ。


青子 > こんにちは。雑誌に掲載されていたときに、毎月図書館で読んでいました。肖像画から病気の診断をするなんて、遊び心いっぱいでおもしろいですね。ミロのビーナスは経産婦というのもあったような気がするんですが。。。 (2007/07/13 19:45)
じょせ > はじめまして、こんにちは。じょせと申します。
非常におもしろそうな本ですね!今度チャレンジしてみます。 (2007/07/14 14:20)
とりこ > ◆青子さん◆
ミロのビーナス=経産婦 ありましたよーたしか妊娠腺がどうの、という内容だったと思います。それにしても水虫だの外反母趾だの経産婦だの言われて この本では散々な言われようですね。いちおう美女なのに(^^;

◆じょせさん◆
はじめまして〜おお、ぜひ読んで見てください★実在の人物だけでなくビーナスやドラキュラ、四ッ谷怪談のお岩さんにまで言及されていたりして、ちょっと変わってます。 (2007/07/16 01:43)
名前 レス
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[57] 白痴<1> ドストエフスキー,米川 正夫岩波書店07'7'8完読 2007/07/09 01:13マイページに「白痴<1>」を購読候補リストとして登録します。
いぜん古本屋で買い求めた全四巻(1950年出版)ドストエフスキー『白痴』です。

まだあと三冊あるのでカンタンにメモをとっておこうと思います。まずこの巻での見せ場

★レフ・ニコラエヴィチ・ムイシュキン公爵(主人公)の死刑論

独自の観点で死刑囚の死に際しての絶望と生への執着を語ってくれた。ちょっと印象的なシーンだ。ちなみにロシアは死刑制度はない(公爵は療養中、スイスで公開処刑を目撃した)。

★資産欲しさにナスターシヤ嬢に結婚をせまるガーニャ(ガヴリーラ・アルダリオーヌイチ)

どこまでも俗物 そして同時に愛すべき男。もっとも痛苦憂悶の多い哀れむべき人物。

「金でももうけたら、わたしはうんと思いきって独創的な人間になりましょうよ。金というものがなによりも卑劣でいまわしいゆえんは、人間に才能まで与えてくれるからです、ええ、そうですとも、世界の終わりまで与えてくれます。あなたはすべてそんなことは子供じみた、一種の詩にすぎないとおっしゃるかもしれないが、仕方がありません。それならそれで、わたしはいっそう愉快なんですから。理屈はどうだろうと、ことはとにかく成就されますよ。しまいまで持ちこたえて辛抱します。Rira bien qui rira le dernier(最後に笑うものがいちばんよく笑う)ですよ!」

この人のカンシャク爆発っぷりに爆笑した。公爵をいきなり殴りつけたシーンにはドッキリしてしまったよ(^^;
ほんとにソリがあわないのねえ。まっったく正反対だものねー性格が…

★もしかして コーリャ(ガーニャの弟 中学生)がこの作品中もっとも良識のある人物なのでは?(汗)

「…だって、ここには潔白な人がおそろしく少なくって、だれひとり尊敬するに足るものさえないんですからね。で、しょうがないから、こちらがいきおい尊大になるでしょう。するとまた彼らは尊敬を強請するのです。ヴァーリャがその随一です。公爵、あなたもお気がついたかもしれませんが、現代の人間はみんな山師ですね!しかも、それが、ロシヤにおいてです、わが愛すべき祖国においてです、どういうわけでそんなことになったか、それはわかりません。」

↑最年少にして倫理的にも常識的にもいっちゃんバランスとれたこと言ってるよーな気がスルぞ!;

ガーニャやラゴージンはひでえ極道だし、公爵はネ申のように人間の美点を凝縮させたような人物で、あまりに常識なさすぎてむしろ赤ん坊のような人だし。
コーリャ最強説が浮上した…

★公爵、バカ呼ばわりされすぎ。

なんか作中10回以上「白痴(バカ)」って言われてる気がする。まあ実際 純粋すぎるというか赤ん坊というか バカなんですけどね;

★あとは…ナスターシヤ・フィリッポヴナが暴走しすぎて可笑しかった。『陵辱されたファンタスチックな女』(BYトーツキイ)『女王さま』(BYラゴージン)
ひたすら狂いまくってます。





表題の『白痴』というのは、おバカさんの公爵のことであり自尊心と恋に狂ったナスターシヤであり、金に執着するあまりブッたおれたり他人の家にドヤドヤ乱入して大暴れするガーニャやラゴージンであり…

この作品にはいろんな『白痴(ばか)』が登場します。

とりあえず 続き読もう
名前 レス
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[56] 走れメロス 太宰治新潮社¥42006'7'3完読 --- 2007/07/05 03:21マイページに「走れメロス」を購読候補リストとして登録します。
top絵変更。芥川龍之介だいすきだ〜!!
人生は一箱のマッチに似ている…芥川龍之介の箴言警句にはドッキドキ。岩波文庫の『侏儒の言葉・文芸的な、余りに文芸的な』はとっても良い本ですよ★高校時代の私の愛読書でした。


久しぶりに本を読みました。最近忙しくてあまり読書できてないんですが…。6月は太宰さんの命日であり誕生日である“桜桃忌”の月なので、太宰治の小説!
太宰さんの中期 (比較的 生活が安定して、芸術的才能の開花がみられた時期)の作品をあつめた 短編集です。
ダス・ゲマイネ、満願、富嶽百景、女生徒、駈込み訴え、走れメロス、東京八景、帰去来、故郷

以下は読書メモ

◆ダス・ゲマイネ
ダス・ゲマイネとはドイツ語で通俗性、卑属性の意味であり、同時に津軽弁の「ん・だすけ・まいね」(それだからだめなんだ)の意味であるらしい。太宰さんの自虐的ユーモアセンスの光る表題だと思いマス(太宰は津軽出身)。佐野次郎、馬場、佐竹、太宰(←作者自身を登場させてる…) 個性的な文学青年たちのやりとりがコメディタッチに描かれている。

◆満願
短い。いわゆる掌編小説というやつ。医者の家 ほのぼの

◆富嶽百景
太宰さんって、富士山好きじゃないのかな…でも「富士には、月見草がよく似合う」のフレーズはとてもキレイだと思った。ちなみにこの物語は、太宰さんが恩師の井伏鱒二を訪ねて甲州・御坂峠の天下茶屋に逗留したときの事を書いたもの。

◆女生徒
太宰さん「なりきり小説」。若い女性になりきって告白調の文体で切々と綴っている。…母の日に読みたい短篇かも。

◆駈込み訴え
これは…(^^;
ユダ→キリストの片想い?(ユダ→キリストへのアンビバレンツな愛憎)というかこれは…。キリスト教圏(カトリック)の人が読んだら怒りそうな内容だなあ!でもユダの卑屈さがリアルで、切迫感が伝わって来る、、この作品は太宰さんが一気に口述したのを奥さんの美知子さんが筆記したものだそうです。

◆走れメロス
ご存知 メロスとセリヌンティウスの友情を美しくえがいた人間愛あふれる小説。とても太宰さんらしくなくて健康(笑)な小説。

ちなみにこの作品の元ネタとなったエピソード↓
太宰さん、親友の檀一雄と熱海の温泉旅館で遊蕩して、お金を使い果たしてしまいました。しょーがないから檀を担保として宿に残し(ムチャな…爆笑)、師匠井伏鱒二に宿代を工面してもらう約束で太宰ひとりが東京へ帰った。
ところがいくら待っても太宰が戻って来ないので、檀は宿屋の主人に事情を説明し、荻窪の井伏鱒二の元を訪れます。そこで、井伏と将棋を指して遊んでいる太宰を発見した!
怒った檀に向かって太宰はこう言った。
「檀君、待つ身がつらいかね。待たせる身がつらいかね。」

…メロスは親友セリヌンティウスのために一生懸命走ったのに…
太宰さん あんた…………!!!←(笑いをこらえている)

◆東京八景
「苦難の或人に贈る」
太宰さんの怒涛の半生(不安定だったころの生活)を悲壮に、淡々と綴った鬱パワーMAX小説。この短篇集の中ではもっともヒサン。でも一番太宰さんらしい。
「五反田は、阿保の時代である。私は完全に、無意思であった。」
「私は、阿佐ヶ谷の外科病院にいた時から、いまわしい悪癖に馴染んでいた。麻痺剤の使用である。……もはや、肉体の為では無くて、自分の慙愧、焦燥を消す為に、医者に求めるようになっていたのである。私は侘しさを怺える力が無かった。……気が附くと、私は陰惨な中毒患者になっていた。」
「毎日、武蔵野の夕陽は、大きい。ぶるぶる煮えたぎって落ちている。」

◆帰去来
中畑さんと北さん、太宰の親代わりとなって親切に立ち働いてくれる二人への感謝の気持ちを表した作品。

◆故郷
帰去来の流れをうけて 津軽の実家から勘当された太宰が 実家の人々と和解する過程を書いた小説
なんか 太宰の二人のお兄さんも そこまで怒ってないじゃないかしら…ちょっと緊張しながらも互いに寄り添っていく様子に家族愛を認めました。



全体として ほのぼの〜 だと思います。処女作品集『晩年』は、遺書を想定した作品集ということでめちゃめちゃ暗いんですが、この短篇集は人生への希望を諦めて無い感じですね。
まあ新婚だったもんね
太宰さんも再起しようと必死だったんでしょう

しかし最終的には、玉川上水に入水して死んでしまうんですけどね…
名前 レス
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[55] 虐げられた人びと ドストエフスキー, 小笠原 豊樹新潮社¥86007'6'4完読 2007/07/05 06:24マイページに「虐げられた人びと」を購読候補リストとして登録します。
「それは陰惨な物語だった。重苦しいペテルブルグの空の下で、実にしばしば、しかも人知れず、ほとんど神秘的に繰りひろげられる、陰惨で残酷な数知れぬ物語の一つである。大都会の薄暗い秘密の片隅では、愚鈍なエゴイズム、衝突する利害、陰気な放蕩、ひそかな犯罪など、不条理な人間生活が煮えたぎる。それらもろもろの無意味かつ異常な生活の絶望的な地獄絵図……」


ドストエフスキー作品は、往々にして強者(ブルジョワ)と弱者(貧民)の対立の構図を描いたものが多いと思うのだけど、この作品はその最たるものかもしれない。
この小説の表題である「虐げられた人びと」というのは、みなしごで乞食のネリーであり、財産を剥奪されたイフメーネフ家の夫婦(ニコライ・セルゲーイッチ&アンナ・アンドレーエヴナ)であり、彼らの娘──約束したはずの愛を裏切られた挙句 N伯爵のお妾さんにならないかと薦められ二重三重の侮辱を受けたナターシャであり、最愛の娘を奪われ かつ工場を破算の道へと余儀なくされたスミス老人であり、妊娠させられた挙句 捨てられたネリーのママであり……
とにかく哀れな人がたくさん登場する可哀相な小説です。社会的に立場の弱い人に限って善人が多いからまた やるせない。

にしてもピョートル・ワルコフスキー公爵の悪人っぷりはどうだろう…人間として面白みに欠ける気がするな。しかし彼の人生観は面白かった。
「すべては私のためにあり、全世界は私のために創られた。(中略)ただ、すべての人間の美徳の根源にはきわめて深いエゴイズムがあることを、幸か不幸かよく心得ているので、どうしようもない。しかも美徳が強まれば強まるほど、エゴイズムもまた大きくなるのです。おのれ自身を愛せよ──これが私の認める唯一の原則ですね。」

はっきり言ってこの小説中 最強の男であり 大悪党である
他のドストエフスキー作品キャラで言うなら『罪と罰』のスヴィドリガイロフ、『悪霊』のスタヴローギンが近い。親近感など沸かないどころか嫌悪の対象にしかならないようなキャラでした。私は悪党にも親近感を求めてしまうので、ワルコフスキー公爵のような人物はちょっとイヤです。

ワルコフスキーの息子のアリョーシャは…なんていうかただの理想家のぼっちゃんで ハッキリ言ってヘタレだったけど生き生きとしてたなあ。罪悪感なんてこれっぽっちもなくナターシャを捨てた男。カーチャとお幸せに。

そして私はこの小説の何に一番感動したかっていうと

ネリー……!!!!

あああもうネリーかわいいなあ可愛い可愛い可愛い
ネリーのためにペテルブルグ中のリラの花をかき集めて捧げたい!ほんとに可愛いです。ブブノワに虐待され、あらゆる辛酸を舐め、心をかたくなに閉ざしてしまった幼い少女ネリー。癲癇もちで病弱で不幸な少女。
彼女が、物語の語り手であるワーニャ(イワン・ペトローヴィチ)に拾われ、愛されるうちに 次第に心をひらいてゆく様子に思わずホロリときたよ。かわいいなぁ
(ワーニャとネリーって、ちょっとBJとピノコに似てるよねーっ(C)手塚治虫)

そしてネリーの意外な出生の秘密を握ったマスロボーエフ…彼はけっこう痛快な男だった。最初キナ臭い人物だなーと思ってたんだけど案外良いヤツでした。「金は金のある所から取れ」…モリエールの金言を信条にしてるちゃっかりした人物です。ワーニャよりも主人公らしい活躍をしてたんじゃないかしらん。

…ま 基本的には わりと? ハッピー・エンド なんじゃないでしょうか。 

不幸なのは 表題だけかもしれません。


たちき > とりこさん、こんばんは。
以前『カラマーゾフの兄弟』で、コメント頂いた者です。
その節は、有り難うございました。関係図をチラチラ見ながら、読んでおります。(とてもわかりやすいです!)
いま、光文社古典新訳文庫から出ている『カラマーゾフの兄弟』を読んでおります。(光文社版は訳も好きなのですが、文字が大きいことがなにより有難いです 笑)
ドストエフスキーも、慣れてくると面白くなってきました。とりこさんの感想も励みになります!
『虐げられた人びと』も、是非読んでみようと思います。 (2007/07/04 21:27)
とりこ > たちきさん、お久しぶりです★
光文社古典新訳文庫のカラ兄弟といえば、わりと最近(?)出版されたものでしょーか。わかりやすいと評判ですよね、私も読んで見ようかしら。。海外文学は訳者が違うだけで物語の印象も変わってくるので 欲張って色々な訳者の本を読みたくなってしまいます(^^;
ドストエフスキー文学って馴れてくるとガーーッと一気に読んでしまうというか、先が気になってしょうがないですよね。うまいなあ。とりわけキャラの性格設定が巧緻で、ミーチャには限りなく信愛の念を抱いてしまうし、イワンのツンデレ懐疑(自嘲)主義には同情しちゃうし、アリョーシャはどこまでいっても可愛くて良い子だし…本当に素敵な小説だと思います!漫画にしても十分おもしろいくらい!
『虐げられた人びと』も奥が深くて面白いのでオススメです〜★ (2007/07/05 03:35)
名前 レス
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[54] フーコーの振り子〈下〉 ウンベルト エーコ, Umberto Eco, 藤村 昌昭文藝春秋¥86007'5'18完読 2007/05/18 21:16マイページに「フーコーの振り子〈下〉」を購読候補リストとして登録します。
な…長かった。ほぼ1ヶ月間この小説にかかりっきりでした(実生活が忙しくてなかなか読書できなかったせいでもあるけれど)。あまりに難解でちっともページが進みません。けどさっき読み終わって、「やっとこの《ムダに》長い小説から解放されるー!」といった清々しい気分です☆

『ダヴィンチ・コード』
記憶に新しい方もいらっしゃると思いますが、この『フーコーの振り子』はダヴィンチ・コードのオカルト度を100倍濃縮してさらに1000倍、複雑怪奇に輪をかけた 小説なんです。

ピラミッドが実際に地球から太陽までの距離の十億分の一の高さだったとか、ケルトの神話とインディアンの神話の間には確かに類似するものがあるとか、この世には説明できない不思議な関連性がゴマンと存在している。それについてはヤコポ・ベルボが話したように、
「いかなるデータも、他のデータと関連性があれば重要な手掛かりになり、その関連性が予想を覆してくれるのです。つまり、この世界のすべての印、私たちが目で見たり聞いたりするもの、誰かが記したものや口から発したものは、ただ表面上の意味だけではなく、必ず何か別の秘密を伝えようとしているのではないかという考えを刺激してくれるのです。その基準は簡単で、とにかく何でも疑ってかかる、ただそれだけのことなのです。」
その関連性─まあ言ってみれば単なる連想ゲームにすぎないのだが─カゾボン、ディオタッレーヴィ、そしてベルボの3人は、テンプル騎士団をネタに連想ゲームを始めた。
不可視の三十六人、クンダリニー蛇、地電流、シナーキー、地下王国アガルタ、ヘルメス、ラピス・エクシリス、カバラ、パウロ派、ベーコン派、イエズス会、サン・ジェルマン伯爵、カリオストロ、オリエント、プロトコール、デミウルゴス、南海のジム・ヨタ・ヴァレンティン、ラチコフスキー、ジャック・ド・モレー、セフィロトの木、TRES、聖刻文字(ヒエログリフ)、カタリ派、ニュー・アトランティス、プロヴァンのメッセージ……古代からヨーロッパに伝わる伝説 密教 密儀をさまざまに組み合わせて3人は歴史(妄想)を再構築し、「甘露、甘露」といってはしゃいでいた。

小説を書くのは、《歴史》を書き直すため。それも書き直してから《歴史》になるような歴史を。

もっともらしい事実をもっともらしい文献からあさってきて 歴史をつくり始めた3人。テンプル騎士団の残したプロヴァンのメッセージにはとんでもない秘密が隠されている、ということを前提に、あやしげな密議に時間を過ごす。

火遊びが度を越し、とうとう収集がつかなくなり、ディオタッレーヴィは心身ともに焦燥、そしてベルボはアッリエ(サン・ジェルマン伯爵の生まれ変わり?)から命を狙われるハメになる…。ただの遊びで作ったはずの歴史が神秘性を持ち、一人歩きを始める。

しかし、
「秘密に大きさなどあるはずがない。いくら大きな秘密と叫んでみたところで、暴かれてしまえば所詮はちっぽけな秘密にすぎないからだ。あるのは空虚な秘密、すぐに漏れてしまう秘密だけなのだ。……秘儀伝授(イニシエーション)というのは、決してとどまることのないことを会得することなのだ。宇宙をタマネギのように剥こうとしても、そのタマネギ全体が皮なのだ。宇宙は無限のタマネギのようなものと考えればいい。そのタマネギはどこを剥いても芯があるのに、そのまわりがどこにもない。要するに、メビウスの輪のようなもので作られた無限のタマネギなのだ。」

創作、妄想、常軌を逸した火遊びが、虚構と現実の境をぼやけさせる。古来、人間の疑り深さが ただの何でもない現実を何か神秘的な、伝説めいたものに変えてきた。謎は謎を呼び、日常は神話になる。……この小説はただの小説ではない。
深遠な《オカルト》妄想歴史書なのだ。



う〜〜〜ん。あのプロヴァンのメッセージにはどんな事実が隠されているのだろう?とワクワクしてたんですが、
カゾボン氏の奥さん(リア)が、たったの二日間で★解読してしまった (しかも★テンプル騎士団のメッセージでもなんでもなく★ただの配達屋の伝票だった★)
というのに痛烈な皮肉を感じました(汗)
現実って得てしてそんなものですよね。胸を膨らませて楽しい想像してたのがバカみたいだ。

ディオタッレーヴィは本当に可愛そうな人でした。メランコリーで皮肉屋のヤコポ・ベルボ。もっとも感情移入してしまったよ。ロレンツァやアッリエは最期どうなったんだろう…ガラモン社長…TRESの一員だったのかいすげえ意外だったよ…

ああ読後の余韻が独特な小説ですね、これ


たちき > ついつい、コメントを書きたくなってしまいました。
私は大学で西洋史学を勉強していまして、修道院と修道僧の日常(中世史のエリアになるのですが)を研究するための推薦書になっていたのが、『薔薇の名前』でした。小説なのに推薦書になるなんて、どういう小説だよ…と当時は思っていたのですが…。ウンベルト・エーコの本は、とりこさんの仰るとおり小説というより、歴史書のようです。とびっきり怪しい歴史書ですよね・笑 (2007/07/04 21:51)
とりこ > おお!薔薇の名前!だいぶ昔になりますけど読みましたよ。国際的ベストセラー小説ですよね。あれも本当にフクザツ怪奇で…当事、私は高校生でしたが、なかなか読了できなくて焦りましたよ!;そーそー とびっっきり怪しいんですよね(笑)連続殺人の設計図はヨハネの黙示録が下敷き!?かと思いきや実は意外と人間の欲望に根ざした(ある意味で健全)というか地に足のついた物語で…なーんだ って感じでした。
西洋史学を勉強なさっているのですね〜とても羨ましいなあ。私も歴史が大好きなのですが(といっても日本の近代史しか知りません・・;)大学では医学・科学というまったく関係ないことを勉強してます(^^;
『フーコーの振り子』、私は西洋史の素養が皆無なので苦労して読みましたが たちきさんのように西洋の歴史にお詳しい方なら楽しく読めるかもしれませんね^^ (2007/07/05 03:51)
名前 レス
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[53] 奔馬 三島由紀夫新潮社¥66007'5'2完読 2007/05/02 15:31マイページに「奔馬」を購読候補リストとして登録します。
『春の雪』の続編。豊饒の海シリーズは4部作仕立ての大作で、輪廻転生がテーマ。
このシリーズのキーパーソンとなるのが本多繁邦。主人公ではないんだけど、主人公のそばでストーリーの動向を見守る、というスタンスを4部作通して保ち続ける。(たぶん。私まだあと2作品未読なんですが;)

前作では学生だった本多が『奔馬』ではやり手の弁護士に。時の経つのは早いものです。
神風連の乱だとか五・一五事件だとか、『春の雪』に比べるとずいぶん政治臭が強くて驚きました。晩年の三島由紀夫の思想の顕れに違いない。陽明学や大塩平八郎…金解禁に浜口元首相…馴染み深い単語もチラホラ。

『春の雪』、内容殆ど忘れていましたがこの作品を読んで大体思い出しました。堀中尉の下宿していたのが、むかし清顕と聡子が逢引に使った場所だとか、そういう微妙な関連性にああ〜、とため息。
で、清顕の生まれ変わりである主人公の飯沼勲(昔、清顕の所で居候書生やってた飯沼の息子)。彼も清顕と同じように(方向性は違えど)やっぱり精神の人だった。

『何故なんだ、何故なんだ』と勲は歯噛みをして思った。『人間にはどうしてもっとも美しい行為が許されていないんだ。醜い行為や、薄汚れた行為や、利のためにする行為なら、いくらでも許されているというのに。
 殺意の中にしか最高の道徳的なものがひそんでいないことが明らかな時、その殺意を罪とする法律が、あの無染の太陽、あの天皇の御名によって施行されているということは、(最高の道徳的なもの自体が最高の道徳的存在によって罰せられるということは、)一体誰がことさら仕組んだ矛盾だろうか。陛下は果してこんな怖ろしい仕組をご存知だろうか。これこそは精巧な《不忠》が、手間暇かけて作り上げた涜神の機構ではないだろうか。…』

なぜなんだ…ってそりゃあ…。
神風連の乱の時からわかりきっていたことな気もするが。天皇のためにやっていることなのに、天皇の名のもとに裁かれる。そんな矛盾は百も承知だと言っていたのは勲自身なのに、やはりその矛盾を飲み込む事が出来ないこの若さ。若いって素晴らしい、そして恐ろしいことです。

あと槙子の裏切りを知った勲の動揺が面白かった。
それから飯沼(父)の、奔放で純粋で正直に生きる息子に対する密かな嫉妬。清顕の死を止めることができず後悔を抱き続け、清顕の生まれ変わりの勲に生きがいを認めた本多などなど人物の心理描写がすばらしかったです。面白かった。
三作目も読んでみよう。
名前 レス
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[52] 坂の上の雲〈8〉 司馬遼太郎文藝春秋¥62007'4'19完読 2007/04/19 21:26マイページに「坂の上の雲〈8〉」を購読候補リストとして登録します。
さあーついに最終巻の感想です。去年の11月から再読を開始して半年かけてゆるゆるじっくり読みました。

私が初めて『坂の上の雲』に手をつけたのは中学3年から高校1、2年にかけてだったと思うのですが、『竜馬がゆく』という青春小説(ある意味キャラクター小説ぽいかも)を読んで感動し、興奮さめやらぬまに読んだこの小説は、竜馬〜よりずっと「史実重視」であり「国家とはなにか」、「日本人とはなにか」ということに重点を置いており、そういう意味で中学生には理解しにくいというか難解な小説だった。それに戦争(帝国主義)というある意味残酷な歴史的悲劇を扱っているため、しばしば読むのが辛くなったりして(旅順攻撃の場面とか)しかし今となってはそれらもすべて良い思い出ってカンジかな。

「降る雪や 明治は遠くなりにけり」
明治という時代──日本史上初めての中央集権の時代、能力主義の時代、万民に「可能性」の開かれた時代、軽佻浮薄な自由主義の時代──その華やかさの裏に常に潜んでいた軍国主義、抑圧されしいたげられた国民たち…すべてがいとおしくて、なつかしくて、ノスタルジイ。私の懐古主義を集約して蒸留したような美しい時代です。その時代を緻密に分析的に壮大に描いた司馬遼太郎先生はやっぱりスゴイや!一生ファンです(大げさな)。
今年の秋からNHK大河で撮影開始!!!3年後の公開が本当に楽しみでしょーがない。たのむよNHK!


前置きが長くなったけど以下は本の内容↓
日本海海戦。「敵艦見ユ」の連絡を受けてバルチック艦隊を追跡する東郷艦隊。
「本日天気晴朗ナレドモ浪高シ」とか「皇国ノ興廃此ノ一戦ニ在リ 各員一層奮励努力セヨ」とか、後年ひろく知られる名言も出てくる。秋山真之は「シメタ、シメタ」とかいいながら甲板の上で踊ります(笑)。
日本海軍の艦隊運動の上手さや下瀬火薬の威力の凄さや指令塔の役割分担の巧みさなど色々 日本側に勝因がたくさんあって、まぁぶっちゃけロシア海軍はグズグズだったので「負けるべくして負けた」といえるんだけど、それにしてもこの巻(日本海海戦)は痛快ですねえ。なんせロシアの軍艦をすべて沈めておきながら日本側の損失は水雷艇三隻という微々たるものでしたから。

日本側に勝因がつのったとはいえ、当初はバルチック艦隊の強固さは東郷艦隊のそれを遥かに上回っていたので
誰一人として日本の勝利を確信していた人はいなかったろうなあ。まさに真之いうところの「天佑」。そして東郷さんの運のよさ。それに咄嗟の瞬間に発揮するアイデア、度胸…有名な「敵前回頭」のシーンでは胸が熱くなった。東郷さんカッコイイ!秋山真之も加藤友三郎もこのときばかりは度肝を抜かれたと思います。
それから秋山、戦闘中に炒り豆ボリボリ食わないでください…笑ったよ…異常に高ぶった神経を沈める一種の現実逃避なのかな…。

この海戦で精神的衝撃を受けすぎた秋山は、軍人を辞めて出家したいと言い出すのだけれど、それだけ戦争てのは惨憺たるものなんですね…兵は凶器である上に戦は危事だ。
名前 レス
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[51] それから 夏目漱石新潮社¥42007'4'16完読 2007/04/16 21:15マイページに「それから」を購読候補リストとして登録します。
長井代助は三十にもなって定職に就かず(いわゆるニート。明治時代にもニートがいたのか)父からの援助でぶらぶら過ごしている。実生活に根を持たない思索家の代助は、かつて愛しながらもその愛情を自覚する事が出来ず、友人・平岡に譲った三千代と再会する。そこからおのれの三千代に対する愛情をはっきり悟った代助は、運命を変えるべく行動をおこすが…物語は悲劇をたどることに…。

夏目漱石の「姦通」小説。姦通小説なんだけどこう熱くなって激したり主人公が突飛なことを言ったりやったりすることがなくていいデスね。分析的で冷静でまっとうな感じ。

この小説は『三四郎』の「それから」を書いた小説と夏目漱石先生ご自身仰られてましたが、私には両者の関連がイマイチぴんときませんでした(^^;
少なくとも三四郎より代助のほうが運命に対しては能動的な感じがした…(といっても『三四郎』を読んだのがはるか昔のことなんであまり覚えてないんですが。三四郎=ヘタレな印象だけ残ってる)代助のほうが良い男な気がする。ニートだけど。プーだけどそれなりに自分の意見をもっているし。
それに『三四郎』の里見美禰子よりも三千代のほうがずっと素直で可愛い(これは個人的な感想…)。美禰子は三四郎のことを愛しながらも軽蔑し、他の男からの求婚をあっさり承諾してしまうという屈折した性格だったけれど、三千代はいちおう代助の求愛を受けてくれるじゃないですか…これは感動したというか嬉しかったなあ…。

「希望なんか無いわ。何でも貴方の云う通りになるわ」
「漂白──」
「漂白でも好いわ。死ねと仰れば死ぬわ」

このやりとりが好き!代助が、求愛したはいいが三千代を養っていく自身がないことを吐露するシーン…三四郎に似たヘタレさを発揮するのはこのあたりなんですが、三千代はそれでもいいと言う。

あとこれは邪推に終ってしまったけれど、代助と兄嫁の梅子さんとのロマンスをほのかに期待しちゃったりも…(梅子さんほんと良い人だ)


それから物語の進行とは直接の関係を持ちませんが、夏目先生が明治の日本の社会に対して投げかけている問題をチラホラ垣間見ました。

「現代の社会は孤立した人間の集合体に過ぎなかった。大地は自然に続いているけれども、その上に家を建てたら、忽ち切れ切れになってしまった。家の中にいる人間もまた切れ切れになってしまった。文明は我らをして孤立せしむるものだと、代助は解釈した。」

それと今「坂の上の雲」を読んでいるせいか、広瀬中佐の話題が出てきたときドキドキしてしまった。広瀬中佐は日露戦争の旅順閉塞作戦のとき英雄的な戦死を遂げ当時軍神として崇められたけれども、「四五年後の今日に至ってみると、もう軍神広瀬中佐の名を口にするものも殆どなくなってしまった」という。(『それから』は明治42年、日露戦争の4年後に書かれた。)
漱石先生の言によると「英雄(ヒーロー)とはその時代に極めて大切な人という事で、名前だけは偉そうだけれども、本来は甚だ実際的なものである。…世間は隣人に対して現金である如く、英雄(ヒーロー)に対しても現金である」

そうですか、でも私は、明治は遠くなりにけり となった今の世でも広瀬中佐が大好きですよ。
名前 レス
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[50] 男子の本懐 城山三郎新潮社¥66007'4'12完読 2007/04/15 10:38マイページに「男子の本懐」を購読候補リストとして登録します。
途中、何事か起こって中道で斃れるようなことがあっても、もとより男子として本懐である。




先月末ごろ逝去された城山三郎先生へ。追悼の意をこめてこの本に手をつけました。
日本の経済小説界の大御所、城山先生…まさに巨星墜つの感

で、以下は内容ですが
27代目の総理大臣・ライオン宰相こと浜口雄幸とその右腕で大蔵大臣・井上準之助
この2人が「金解禁」という同一の目標に向かって邁進努力する話です。
重厚で威厳に満ちた浜口と、スマートで行動派でやや軽薄の感がある井上…タイプが異なるからこそ良いコンビなんだな〜っ
同じ性質のところもあったけど…二人ともゴルフが好き(だけど上手くない)とか、家族に甘い(家では良いパパ)とか。こーいうヒューマンなネタが多くて思わず声出して笑っちゃったよ
しかし昭和史にこんなカッコいい人らがいたとは意外だった。いつか自分が暗殺されるであろうことを自覚しながら仕事って、フツーできるもんですかね。並の覚悟ではありませんよね

私は残念ながら経済学に詳しくありませんので、どうして金の輸出を解禁すれば国内がデフレになるのかとかそういう機構がよくわからないんですが、城山先生は要所要所できわめて単純でわかりやすい説明を挿れてくれていたので、スッキリ読めました。
名前 レス
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[49] フーコーの振り子〈上〉 ウンベルト エーコ, Umberto Eco, 藤村 昌昭 文藝春秋¥86007'4'12完読 2007/04/14 16:14マイページに「フーコーの振り子〈上〉」を購読候補リストとして登録します。
まず、作者のウンベルト・エーコ氏について↓
記号論で世界的に有名なイタリアの哲学者、ボローニャ大学教授、小説家、1980年に発表した『薔薇の名前』でストレーガ賞を受賞してる。『フーコーの振り子』はそれより8年後に書かれた長編小説。なるほど。

あのーまずこの小説のブ厚さにビックリ…そして内容の豊富さにビックリ…最期に、イタリアのギャグ(笑いどころ)のワケ解らなさに ビックリ(汗)

大体のあらすじは、作家の池澤夏樹先生が書評を書かれているのでそちらを読んだほうが良いかも。
ttp://www.impala.jp/bookclub/html/dinfo/10108007.html

この本を読む前に、旧約聖書と原始の宗教のこと、それからギリシア哲学〜中世ヨーロッパにかけての歴史・文化を、表層だけでも知っておくべきだと思いました。じゃないと、読んだところでさっぱりです。ちんぷんかんぷんだ!だって私ぶっちゃけこの本を読むまで「テンプル騎士団」すら知らなかった…(お恥ずかしい…)フリーメースンは知ってましたけど。あと出てくるのは…、薔薇十字団(サン・ジェルマン伯爵、カリオストロとか)…聖なるカバラ、隠秘学、カバリズム、錬金術、黒魔術、アジア〜アフリカの密教と儀式、混交宗教、セフィロト(ユダヤ教にいう、生命の樹)。とか、暗号解読に数秘術、とか、いきなりピラミッドと円周率について滔滔と語りだしたりとか、他にも、色々…。

まぁ…なんだろ…池澤先生のいうように…「ヨーロッパ史に登場する怪しい人物が一人残らず出てくる小説」です。もう、この一言に尽きるなぁ。この小説はテンプル騎士団の謎や伝説を紐解くついでに、あっちこっちの秘密結社に寄り道しまくる小説です。胡散臭さ満点なんです。オカルトの歴史を全部つめこんだ小説です。

主人公のカゾボンは、大学の卒論でテンプル騎士団について書いた経験を活かして、出版社ガラモンに入社する。(ガラモン社はオカルト雑誌を発行していた。)そこでの同僚、皮肉屋?のヤコポ・ベルボや、自分がユダヤ人であると主張して譲らない?ディオタッレーヴィとともに、テンプル騎士団の謎を追跡するうちに、ある大きな陰謀に巻き込まれてしまう…という内容。もう、どう説明して良いかわかりません複雑すぎて。すっごい面白いんですけど…この小説の魅力をじょうずに紹介できない…とりあえず下巻を読もうああああ脳が飽和してます…。
名前 レス
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[48] トオマス・マン短篇集 トーマス・マン, 実吉 捷郎岩波書店¥79807'4'4完読 2007/04/13 14:21マイページに「トオマス・マン短篇集」を購読候補リストとして登録します。
幻滅、墓地へゆく道、道化者、トリスタン、小フリイデマン氏、幸福への意志、トビアス・ミンデルニッケル、ルイスヒェン、餓えた人々、衣裳戸棚、神の剣、ある幸福、予言者の家で、悩みのひととき、なぐり合い、神童、鉄道事故

全17編からなるトーマス・マンの初期短篇集。

初期のマンの作品は大抵、「芸術家」と「市民」と相反する性質の間で葛藤する人間像がテーマとして存在するのですが、これらの短篇もそんな感じでした。すべての感想を書くのは面倒なので、印象に残ったものだけ書いておこうと思います・

●「道化者」…これはトーマス・マン自身の半生を描いた、自伝ふうの小説です。精神における芸術的高貴と、俗世間との生活を両立できず、けっきょく道化者をよそおって馬鹿者のように振舞う主人公の、破滅への道のり。…太宰治の『道化の華』とか『人間失格』は、おそらくこの短篇に影響されてるんじゃないかなーと思ったりした。

●『トリスタン』…療養院「アインフリイト」=後年の大作『魔の山』におけるスイスのサナトリウムではないか。あとクレエテルヤアン夫人=ショーシャ夫人?
この作品にもやっぱり「精神」と「実生活」の対立と、その悲劇性というテーマが掲げられてる。

●『小フリイデマン氏』…不具者のヨハンネス・フリイデマンはこの人生のすべてのもの(幸福だけでなく不幸や憧れ、どんな瑣末な事も)を享受し楽しみ、味わいつくす、エピキュリアン(享楽主義者)。身体に不具がある(=外見が良くない)ためにまっとうな恋愛に恵まれなかった小フリイデマン氏は、あるときフォン・リンリンゲン夫人に想いを寄せるようになる。しかしそれは破滅への第一歩だった…。
エピキュリアンであるはずの彼が苦痛にうちまかされて身を滅ぼす場面が劇的だった。

●『トビアス・ミンデルニッケル』…子犬を虐待したり、次の瞬間にはやさしくしたり、ちょっと病的…だけど内容は起伏に富んでおもしろい。

●『餓えた人々』…作者が[習作]と銘打っている通り、これはのちの『トニオ・クレーゲル』のためのプロットのようなものだと思う。デトレフ=トニオ・クレーゲルで、リリイ=ハンスorインゲ

●『衣裳戸棚』…主人公アルプレヒト・ファン・デル・クワアレンの引越し先の部屋に据え置かれていた古い衣裳戸棚…そこに不思議な女性が忽然と姿を現す。幻影の女性と、余命いくばくもない主人公の、不思議なやりとり。この作品は17編の短編中もっとも異彩を放っていた気がする。

●『神の剣』…ヒエロニムスの言辞はマンの意思を代弁しているのだろうか。「知というものは、この世の最も深い苦悩なのですよ。けれどもそれは煉獄の火です。その火に浄められる苦悩を経なければ、どんな人間の魂も救われることはできないのです。…救う力があるのは、われわれのいとわしい肉の情熱を、死に絶えさせ、消え果させる、あの認識なのです。」「芸術というものは、人を誘惑して、肉的生活の鼓舞と是認にかり立てるような、そんな破廉恥な詐欺じゃありません。芸術とは、人生のあらゆるおそろしい深みへも、恥と悲しみとにみちたあらゆる淵の中へも、慈悲深く光を射し入れる神聖な炬火(たいまつ)です。芸術とは、この世に点ぜられた神々しい火です。この世を燃え上らせて、そのすべての汚辱と呵責ごと、救いをもたらす憐憫のうちに消滅してしまわせるために、点ぜられた火なのです。」
名前 レス
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[47] 坂の上の雲〈7〉 司馬遼太郎文藝春秋¥62007'3'26完読 2007/04/12 21:29マイページに「坂の上の雲〈7〉」を購読候補リストとして登録します。
ご無沙汰してました。読書は相変わらず続けてましたが、筆不精なのでなかなか読後感を書く気になれず(汗)
けっこう前に読了したので感想に新鮮味が欠けるかと思いますが…せっかく読んだので、メモがわりに何か書いておこうと思います。

この巻では、奉天の会戦に眼目をあてています。じじつ、日本側の総司令官・大山巌は、「来るべき会戦は、日露戦争の関が原なり。ここに全戦役の決勝を期す」と訓示したように、日露戦争そのものをこの会戦で切り上げたい意図をあらわしています。
それについての司馬評がおもしろかった。
「いったい奉天作戦は日本軍にとって勝利だったかどうなのであろう。さらに戦いにおいて『勝つ』ということはどういう基準で成立するのか。…(中略)…
『勝った』
ということの判断基準のひとつに、その軍隊が作戦目的を達成しえたかどうかということがある。それを尺度にすれば、この会戦において日本側は負けはしなかったが、しかし勝ったとは言いがたい。なぜならば大山巌の前記作戦目的は達成されることなく三月九日の大風塵のなかで主力決戦はたち消えるごとく消えてしまったからである。…」(p171以降〜)

戦争での勝利が、必ずしも、敵軍を「殲滅する」とか「撃滅する」とかいったことを意味するわけではないんですね。日本軍はこの会戦で辛くも勝利を得た。辛くも──つまり「殲滅」はできてない(退却させただけ)ということなんですよ。

クロパトキンの繊細な思考回路を撹乱し、よく戦った鴨緑江軍。「何やってんだァア〜はよ北進せんかい!!」としじゅう司令部に怒鳴られっぱなしだった可哀想な第三軍(乃木軍)。奉天の北方に進出してクロパトキンに精神的な不安を与えた秋山(兄さん)支隊…
これらの猛攻をうけてロシア軍は陸続と北方へ敗走していく。もちろん、日本軍には追撃できるよーな余力などない。日露戦争を終結させるべく、両軍まさにドロ沼の死闘を演じたのであった。


で、あとは「東へ」「艦影」「宮古島」の章で、ロジェストウェンスキー率いるバルチック艦隊が、マダガスカルを出航し、対馬海峡経由で、ウラジオストック向けて東北へ進行し始めたことが書いてある。

太平洋経由なのか朝鮮半島系由なのか甲論乙駁、どっちを通るかが海軍の勝敗を決するわけで、秋山真之はああでもないこうでもないとひたすら懊悩します…ノイローゼになりかけて靴はいたまま寝たりします…(笑)笑っちゃだめだけど可哀想なような可笑しいような

「宮古島」の章では、知られざる(歴史にうずもれた)日本の小英雄たちのことがかいてあって、司馬遼太郎の個人的な愛情(素朴な国民への愛情)が伺えて、和んだ…。
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